米軍撤退 2014 9 14
書名 2020年日本から米軍はいなくなる
著者 飯柴 智亮 講談社新書
「2020年日本から米軍はいなくなる」
そのとおり。
そもそも、米軍の費用は、
アメリカの納税者が資金を提供しています。
だから、アメリカの納税者を納得させる理由がなければ、
米軍が日本に駐留する理由はありません。
もちろん、米ソ冷戦時代は、
納税者を納得させる理由が十分にあったでしょう。
しかし、今は、
アメリカの納税者を納得させる理由を探すのが難しいのです。
さすがに、アメリカ・中国冷戦時代という理屈は、無理です。
中国が実質的に資本主義化してしまった上に、
アメリカの納税者も「経済人」です。
確かに、アメリカ人は、日本人と比べれば、軍事に関心があります。
しかし、それ以上に、経済に対する関心の方が強いのです。
中国市場は、日本市場と比べると、はるかに巨大です。
そういうわけで、日本は、冷戦が終結した時に、
国防というものを真剣に考えなければならなかったのです。
にもかかわらず、平和ボケという持病のために、
国防について、思考停止になっていたのです。
いや、「誰かが守ってくれる」という女性的な思考になっていたのです。
さて、多くの日本人は、こう思うかもしれません。
日本から米軍がいなくなっても、
自衛隊は優秀だから、日本を守ることができると。
しかし、そこに問題があるのです。
本来、軍隊というものは、自己完結性が求められます。
しかしながら、自衛隊は自己完結性に欠ける部分があります。
それは、自衛隊が米軍の補完勢力として発達してきた歴史があるからです。
自己完結性という視点で、自衛隊の装備を見れば、
まだまだ欠けている装備が、たくさん見つかるでしょう。
依然として、自衛隊は米軍の補完勢力という部分が残っています。
だから、日本は、「自分の国は自分で守る」という体制になっていません。
アメリカは、民主主義の国です。
大統領も、連邦議会も、有権者のニーズに応えていかなければならないのです。
今、有権者のニーズとは、「経済」や「景気」です。
この10年で、貧富の格差が激しいものとなってしまいました。
まさかと思いましたが、アメリカで「階級闘争」がありました。
「ウォール街を占拠せよ」という大規模な運動が起こりました。
もうアメリカは、内政で忙しく、戦争ができない国になったと思います。
今のアメリカは、せいぜい、巡航ミサイルを発射するか、
限定的な空爆という「エコノミーな戦争」ができる程度です。
ペルシャ湾 2012 11 4
将来、アメリカから、
「ペルシャ湾は、日本が自力で守れ」と言われる日が来るでしょう。
現在、ペルシャ湾は、バーレーンに司令部を置く、
アメリカ第5艦隊(空母を含む)が守っていますが、
この体制が、いつまで維持できるか。
アメリカは、いつの間にか、原油輸入の多様化を進め、
原油の中東への依存度は、かなり下がっています。
やがて、アメリカは、中東なしでも、
原油も天然ガスも輸入先に困らないということになるでしょう。
さらに、今、アメリカは、シェールガスやシェールオイルで盛り上がっています。
これは、もしかすると、禁断の果実を口にしたかもしれませんが、
いずれにせよ、アメリカの国内資源は有力です。
つまり、アメリカの中東への関心は下がっていくでしょう。
問題は、アメリカの納税者の動向です。
「巨額の税金を使って、アメリカ第5艦隊を駐留させているが、
これは、税金の無駄遣いではないか」という声が出てくるかもしれません。
そうなると、いったい、どこの国が、
ペルシャ湾の原油や天然ガスを最も利用しているのか。
つまり、最も恩恵を受けている国が、ペルシャ湾を守るべきではないかとなるでしょう。
その国とは、日本です。
相変わらず、日本の政治家は、天下泰平の日々を過ごしているでしょうが、
本当に、のんびりしていていいのか。
親米派の政治家は、「日米軍事同盟があるから大丈夫だ」と言うでしょうが、
はたして、それでアメリカの納税者を納得させることができるのか。
世界は、刻々と変わりつつあるのです。
にもかかわらず、日本の政治家の頭は、終戦直後のままです。